町田大商都構想
〜政策提言12〜
政策提言① スカウト・キャッチ・客引きの規制
町田市の魅力の一つは“中心市街地の賑わい”です。その中核となっている商業施設が今、とても苦しそうです。旧109がレミィ町田、町田センタービルと度々名前を変え、空きテナントが増えて寂しい状態となっていますが、同様の状況が各商業施設でも見られるようになってきました。デベロッパーの方々が口にするのは、町田はいよいよ消費者がお金を落とさない街になりつつあるということです。相模大野駅においても伊勢丹の撤退に伴い、商業エリアの著しい衰退が見られましたが、近い将来、町田でも同じことが起こり得るのではないかと、大いなる危機感を抱いています。
若者の街として栄えてきた町田市ですが、その若者が減少していく日本で、インバウンド効果も少ないこの街の未来は、このまま何もしなければ、商業施設が撤退し、空洞化してしまうかもしれないという強い危機感を覚えます。若者を需要者として考えるだけでは今後の街の発展は望めないでしょう。
町田市のマイナス要素を挙げるとすれば、若者を除く市外の人々が寄り付きにくい、住みにくい空気感があると思います。その理由の一つとして、中心市街地の『治安の悪さ』『景観の悪さ』が挙げられると思います。昨年の発砲事件でも、巷では治安の悪さを想起させるネットニュースが流れました。
夜、町田駅を降りた際、無秩序に声をかけてくるスカウト・キャッチ・客引き。これらが横行する風景はまさに、新宿・歌舞伎町の負の空気に近いものがあります。ゴミの散乱もそのことが要因であると考えられ、夜の中心市街地はカオス状態とも言え、女性や高齢者、ファミリー層にとって近寄り難い空気感が常態化しています。
これらの層の人たちが町田市を避け、健全な空気感のある海老名や新百合ヶ丘などに流れていくのは必然です。夜の街としての魅力は残しつつも、秩序があり、見た目の景観を整え、多くの人たちが安心して楽しむことができる雰囲気を作るために、条例制定等の必要性を感じます。
政策提言②➤原町田大通りの景観・緑化
政策提言①を実行することで、町田駅を降りた際に感じる街の怖い空気感はリセットされます。次に重要なのは、そこから見える最初の街の景色です。JR横浜線町田駅から延びる『原町田大通り』こそ街の中心地であり、ここの“魅せ方”により、街の印象は劇的に変わります。
将来的には芹が谷公園まで道が繋がり、その上を多摩都市モノレールが走ることになります。また、車道を1車線化する構想があるとも聞きます。これらの再開発に加えて、この原町田大通りをさらに『緑道化』『サイクルロード化』することも併せて提言したいと思います。
駅から公園までの道が自然の緑で一直線に繋がり、都会的な部分と町田市のもう一つの魅力である自然や里山が繋がるストーリー性を最初の景観で併せ魅せることにより、街への関心と機会が一気に高まると考えます。
政策提言③➤白洲次郎氏・武相荘のシンボル化
街に誇りを持つために大切なことは『シンボル』を掲げることであり、それによって町田市の市民性を広く発信することができると考えます。そう考えたとき、シンボルになり得る重要な人物が町田には存在します。
かのGHQに『従順ならざる唯一の日本人』と言わしめた『白洲次郎』です。様々な評価はあれど、町田でこれほど逸話の多い人物、日本中に隠れたファンを持つ人物は他に見当たらず、そこにフォーカスを当てない手はありません。
町田市の市民性は、白洲次郎氏のスタイルに似通っていると私たちは考えます。“何者にもなびかない”、“中央に忖度がない”、“自由で寛容”、“カントリージェントルマン”。そのストーリー性を『白洲次郎』というシンボルを掲げることで、『白洲次郎』が持つ前述のイメージと町田市の市民性がシンクロし、シビックプライドは高まるのではないでしょうか。高知の坂本龍馬、。鹿児島の西郷隆盛のように。
さらに『白洲次郎』のシンボル化によって、観光にも非常に大きなプラスの効果が得られると考えます。市外の人々が町田市を観光目的に訪れたくなる要素は今のところ少ないですが、『白洲次郎』およびその住まいであった『武相荘』を町田市のシンボルとして推し出すことによって、日本中の人々が町田市を訪れるきっかけになると考えます。白洲次郎氏の生き様は現代の日本人に強く訴えかけるものであり、町田市にも多大な影響をもたらすのではないでしょうか。私たちは全市をあげた『白洲次郎』、『武相荘』のプロモーションを提言します。
その他、FC町田ゼルビアを中心としたスポーツ振興、里山や町田発の人気製品等のコンテンツを対外的に発信していくことも、シビックプライドの醸成に繋がると考えます。
政策提言④➤大商都構想ビジョンの打ち出し
町田の市民性の特徴の一つとして、“自由で寛容”である点を挙げました。このことは町田市が昔より絹の道として発展し、『ニ・六の市』などが形成され、多くの人が行き交い、多様な文化や近代思想の受け入れが早くからあったことが背景にあると考えます。
近代においては、自由民権運動がこの地で拡大しましたが、ここにも交流による情報の豊富さや先見性、または地理的に中央に近からず遠からずの距離感が情勢を客観的に見ることができる地域性に関係していると考えます。
町田にはコンテンツが多様にあり、それぞれが特徴的です。その一方で、強みを絞り込むことができていませんでした。表現を変えれば“何でもある街は、何もない街と同じ”とも言え、特徴を打ち出せない限り、他の市町村との差別化や区別化、抜きん出ることはできません。コンテンツの議論をあれこれ続けるうちに、他の街が推し進める差別化や区別化の中で、町田は埋もれてしまっています。
小規模事業者による大商都構想を実現する上で、具体的に以下の5つの政策を提言します。
現に市内で商売をしている人の多くは、“商売のしやすさ”を口にします。それは大手企業が独占するような企業城下町ではなく、有力者の“鶴の一声”で街のルールが決められてしまうような地域性もない、自由で寛容が故に、他者の足を引っ張るような感覚がないことが理由として挙げられます。この特徴は実は稀有なことであり、その自由で寛容な空気感の下で町田市は商都として発展してきたものと考えます。
この『スモールビジネスの集合体』としての良さこそが、『商都町田』の最大の強みではないかと私たちは考えました。したがって私たちが掲げたいビジョンは『小規模事業者が躍動する大商都構想』です。
政策提言⑤➤インキュベーションチームの登用・編成(事業支援機能の強化)
商都である町田市を日本有数の“大商都”にするために、まずはビジネスの第一線で活躍した経験や豊富な知識を持つ有能な人材を登用することや、複数の人材をチームとして編成することが不可欠です。そこで、有能な人材を各地から選抜し、商工会議所との連携のもと、町田市として強力なインキュベーションチームを編成することを望みます。
現在進行形である「町田市産業支援施設複合化」においても、このインキュベーションチームが施設を構成する3つの団体(新産業創造センター・商工会議所・勤労者福祉サービスセンター)の横串となる役割を担うことを期待します。また、複合施設のハード面、つくりも、交流や連携が強力に生まれる動線づくりが必須であると考え、併せて提言します。
政策提言⑥➤ビジネスコンテストの開催(小規模創業支援日本一)
インキュベーション・創業支援に力を入れる市町村は沢山あります。ビジネスコンテストもその多くはビッグビジネス、IPOやバイアウトを目的としているものが多いように思います。町田市の魅力の一つは前述の通り、大資本や有名企業の城下町ではなく、小規模事業者の集合体であることです。ここでの起業家が増えることで、人の流入を増やし、地域の多様性を創り出すことに繋がりします。
そこで、自らの生き様を表現しようとする事業者をターゲットとしたインキュベーション・創業支援において日本一の街にすることが、地域の多様性を生み出し、街全体が俄然面白くなること事に繋がると考えます。日本各地で大手企業主導による画一化された“幕の内弁当”のような街が増える中、町田市は多様性に富み、個性的で自由な人たちの活動が活発な、魅力溢れる街になることを望みます。
これからの時代、単に経済的な成功だけを目的とした事業者が集まる街ではなく、自らの人生を輝かせるために事業を興す事業者が集まってきたとしたら、間違いなく活力ある街になると考えます。だからこそ、小規模事業者に焦点を定め、主婦や学生も含めた起業や再チャレンジを後押しできるビジネスコンテストの開催を、全市上げて取り組むことを提言します。
政策提言⑦➤地域M&A・事業承継・マッチングのプラットホームづくり(地域企業の強化)
後継者不足による廃業は我が国全体の課題であり、町田市でも同様です。一つの事業者がマッチングの機会を得ることなく廃業することは、新規事業者や既存の事業者にとっても有益なリソースを失うことであり、地域にとっても大きな損失です。現在も事業承継やマッチングの機能はあると聞きますが、実際に市内事業者にマッチングの機会が広く提供されているとは言いがたい状況です。
そこで、廃業や統合、協力を検討している事業者や研究機関の多くが登録し、事業拡大を検討している町田市の事業者であれば誰でも利用できるオンライン上のプラットホームを創る必要があると考えます。プラットホーム上で実際に目にする事ができる地域M&A、事業継承案件、マッチング情報、物件情報、大学内での研究内容などが閲覧できるシステムが必要です。有益なリソースの見える化を新設のインキュベーションチーム主導の下、新産業創造センター、地元金融機関、市担当部署、商工会議所の連携強化により、鮮度の高い情報リソースを共有し、事業者が強くなる“キッカケづくり”を求めたい考えです。
加えて、町田市の課題には“育った企業の流出”が挙げられます。このことは町田市にとって大いなる損失であり、将来の賑わい喪失に繋がることとして大変危惧する所であります。また、成長した事業者の市外への流出は、事業税の減少のみならず、そこで働く多様性のある人材や所得が増えた従事者も含めて市外へ流出することを意味しています。
都心の近郊にあることが創業時には有利に働くものの、事業拡大につれて町田市に留まる理由がなく都心部に転出してしまう。町田市で創業・事業拡大した事業者を市外に流出させず、町田市の力強い味方にするために、成長性を感じる新興企業を選抜し、『特別支援』や『表彰』を行うなど、地域との繋がりを深める仕組みを整えることも併せて提言します。
政策提言⑧➤エリア地場企業合同説明会の開催(採用に強い街に)
優秀な人材や多様性のある人材の確保は、ビジネスの基本となります。町田市からベンチャー企業が流出する理由も、都心部で採用に当たった方が有利という点にあると考えます。
町田市は国内で有数ともいえる大学、専門学校を抱える自治体であり、それにより市内に若者が多く集まるという優位性をもちながらも、学生の多くは卒業後、都心に出てしまうという課題があります。町田で学生時代を過ごした人材を町田市内の事業所に就職させる流れを、官民一体となってプロモーションすることにより、採用に強い街として大商都への道筋をつくることができると考えます。採用の大きな軸として、商工会議所と町田市が共催している合同企業説明会をより実効性の高い「大合同説明会」に昇華させることを提言します。
地元企業も専門のインキュベーションチームの力を借りながら、自社のPR活動や魅せ方をブラッシュアップし、合同説明会を魅力的なものにしていくことで、自社の成長と共に若者が町田市に定着する流れをつくることができると考えます。
政策提言⑨➤市役所DXチーム知財の還元
2025年問題(労働力不足)を目前に控えている現在、企業のDX化は待ったなしの状況です。一方でその必要性を感じながらも、具体的な対策を打ち出せずにいる事業者も数多く存在します。DX専門チームを編成できる大手企業はよいですが、多くの小規模事業者は独自の専門チームを編成したり、高額なコンサルタント契約を結んだりすることはできません。
そこで市役所の優秀なDXチームの知財を、民間の小規模事業者に還元することを提言します。
町田市内で市役所ほど充実したDXチームをもつ企業は存在しません。具体的には行政で活用しているIT技術をベースに、その応用として業種・業態や規模に応じたビジョンの創出、取り入れやすい仕組みやその効果などについてセミナーを開催する、あるいは相談窓口を開設する等、事業の効率化やこれからの労働者不足を補うためのヒントを企業に与える役割を担っていただきたいと考えます。DX化に乗り遅れて倒産する企業が増えることは、地域にとっても望ましいことではありません。また地域としてDX化を推進する姿勢を示すことで、地域全体のDXの底上げにも繋がると考えます。
政策提言⑩➤まちなかデジタル化の推進
ターミナルとしてのJR横浜線および小田急線の町田駅は、国内でも有数の乗降客数を誇る一方、乗り換え地点としての利用に留まり、滞在場所として選ばれていないように感じます。乗り換え地点としてだけではなく、滞在場所としても選ばれる価値を十分に提供すべく、デジタルサイネージ等のデジタル技術を用いて町田市の魅力発信をを行っていくことが必要であるあると考えます。またこれらを使い、地元事業者のPR、CMの告知等を積極的に行っていくことで、大商都構想に弾みをつけることができます。そこで、現状のペデストリアンデッキのサイネージのみならず、より範囲を広げたサイネージ機器の設置を提言します。
中心市街地の情報の他、市内各地の里山をはじめとした地域資源の情報発信を行うことで、中心市街地のみならず、町田市全体の回遊性向上にも寄与することとなり、またイベント告知による町田市への再訪のきっかけづくりにも繋がります。これらに加えて、都市機能として求められている街中フリーWi-Fi、災害時における誘導サイン、スマートシティ実現のためのデータ受信機としての機能も併せ持つことも期待できます。
政策提言⑪➤里山の有効活用と大々的PR
町田市は都会的な市街地がある一方、少し街を離れると里山や自然が豊富という利点があります。このことは都心部と差別化ができる要因になり得ます。
都心部での仕事や生活では、大空や土の匂いを感じることができない中、本来人間が持っている自然との調和を保つことが難しいように思います。その点、町田市では中心市街地から少し離れれば、容易に自然に恵まれた場所へ行くことができます。公園の数は全国で17位、東京都では2位であり、自然が生活の一部となっています。まさに都会と田舎の両面を併せ持つ『トカイナカ』とも言え、このことが町田市の大きな魅力の一つとなっています。
一方で、町田の自然の中には人々が訪れたくなるような魅力的なコンテンツが少ないことを大変残念に思います。北部丘陵と呼ばれる小野路地域や小山田地域などはまさに里山ですが、訪れる理由や魅力的なコンテンツが見当たりません。
里山は海外で『SATOYAMA』とそのまま訳されるほど、実は実は希少な存在です。里山が身近にある私たちには、その価値が十分に理解できていないのかもしれませんが、外国人を含む多くの人々にとって、里山は大変魅力的な場所のはずです。
そこで、この里山に人々が観光目的で訪れたくなるような付加価値を付け加えていくことを提言します。具体的には、食・宿泊・交流・学びなどのコンテンツの併設です。観光立国を推進している我が国において、特に宿泊は都心部だけで賄うことができず、東京都下へと波及してくるはずです。アクセスのよい町田市にとっては大きなチャンスであり、“町田の魅力”をしっかりと広める機会を活かさない手はありません。
また、サイクルロードを充実させることで、中心市街地から公園や里山を繋ぐ選択肢を増やすことができ、さらに各地に魅力的なコンテンツをプラスすることにより、市民生活は仕事のしやすさに加えて豊かで成熟したものになります。
『里山に一番近い商都町田』として大々的にプロモーションを行うことで町田市の魅力は向上し、関係人口・交流人口・定住人口の増加に大きく寄与するものと考えます。
政策提言⑫➤ペットフレンドリーな街づくり(寛容な街づくり)
近年、公共施設を中心にバリアフリーな環境づくりが定着してきました。随所に子どもや障がい者が利用しやすい工夫がなされ、サスティナブルな社会の実現へ向けた取り組みが進んでいることを実感しています。
一方、コロナ禍で増加したといわれるペット需要に対しては、一部の店舗を除いて「入店・入館不可」のところが多く、公園施設の芝生内なども「ペット禁止」となっています。マナーやルールは必要ですが、喫煙者の「分煙」と同様、スペースを分けることで「ペットとの共生社会」を実現することもまた、サスティナブルな社会への一歩と考えます。
「ペットフレンドリーなまちづくり」を実現するために、まずは公共施設において「ペット可」のエリアを増やし、公園などにドッグランを設置することを提言します。ペットの散歩をしていると、同じペット連れの方や子ども達と自然に会話が生まれます。人との会話は心を穏やかにし、豊かで温かい街づくりを促進するでしょう。ペットフレンドリーな街づく
りは、地域としての寛容さを示すことにも繋がり、人々が住みたくなる街として、人口流入にも大きく寄与すると考えます。